■バッテリー・デサルフェーター付きバッテリー・チャージャの試作




製作したバッテリー・チャージャ

<概要>
 自動車やバイクでおなじみの鉛蓄電池を放電状態で長期間放置すると,再度満充電しても元の性能が得られなくなってしまいます.これは鉛電極の表面に酸化膜が形成されて電流が流れ難くなるためです.この現象は「サルフェーション」(sulfation)と呼ばれます.
 デサルフェーターは,連続的なパルス電流を電池に加えることによって,表面にできた酸化膜を除去し,性能回復を図るものです.

 これは私が考案した物ではなく,下記のサイトを参考に製作したものです.この場を借りて御礼申し上げます.動作条件や回路は少し変更してあります.
DIYバッテリーパルサー

 なお,現時点でその性能回復効果を定量的に確認するには至っていません.
 私は,そもそもその効果に懐疑的でした.6年目を迎えたバイク用バッテリー(12V14Ah,注液式)は,普通に満充電まで充電してもひと月ほどでセルが回らなくなっていました.それが本機を使って「満充電+1週間のパルス充電」した後は2ヶ月たった今も順調にセルが回ります…とはいえ新品同様とはいえません.6年めを迎えたバッテリーですが,まぁ3年ぐらい使ったバッテリー程度には復活している感じです.バイクの利用頻度は週1回せいぜい1〜2時間乗る程度です.
 現状の状態にするのに,セルが回らなくなったバッテリを下ろして,CVCC電源を使って2Aぐらい流しながら満充電にした後,1週間ほど連続してパルス充電しました.パルス充電中にバッテリーには0.2Aぐらいのトリクル充電電流が流れていました.


実験中のようす

<製作の動機>
 私のバイクは四半世紀ほど前のホンダCB-750FCです.そのバッテリーは,YB-14LA2(ユアサ)という注液式の伝統的な鉛蓄電池です.バイクのバッテリーは普通乗用車用と比べて容量が少ないくせに,価格はかなり高価です.ここ10年ばかり激安DIY店なら7,400円ぐらいで買えますが,もっと前には実売で1万円以上してましたからねぇ(--; 軽自動車用なら実売2,000円以下ですから,その性能を考えると依然として非常〜に割高感があります.
 四半世紀前と同じ規格のバッテリーが入手できるのは古いバイクにとってありがたいことなのですが,性能も当時のままというのが不満です.この25年間の技術開発によって,鉛蓄電池の性能は,高まっているのに,形状や電極位置の都合で簡単に乗せ替えることができず,その恩恵を受けられません.
 私がバイクに乗るのは,せいぜい週末だけ,場合によっては数週間乗らないこともあります.そんな乗り方なので,バッテリー自身の自己放電によって放電状態になり,それを知らずに放っておくと,酸化皮膜が結晶化し,充電すらしにくくなる「閉塞状態」に陥ります.
 さて昨秋あたりから,そろそろバッテリーの寿命が尽きたようで,CVCC電源を使って満充電+αまで充電して,毎週末に2時間ほど走行しても,ひと月しないうちにセルモーターが回らなくなってしまうようになりました.
 実は,この古典的なバッテリーYB-14LA2には,この20年を越えるつき合いで,ほとほと愛想が尽きたので,最新のMF型バッテリーを購入済みでして,形状の違うバッテリーを取り付けられるよう,バッテリー・ケースも改造済みでした.
 でも,せっかく寿命が尽きたバッテリーが得られたので,以前から目をつけていた「DIYバッテリーパルサー」のウェブ・サイトを参考にして,デサルフェーターの実力を体験してみることにしました.これが製作の動機です.(^^)

<動作原理>
 詳しくは下記サイトを参照してください.
DIYバッテリーパルサー

 大まかに要約すると次の通りです:
 自動車やバイクでおなじみの鉛蓄電池を放電状態で長期間放置すると,電極表面にPbSO4の皮膜が付着したまま結晶化し,その部分は絶縁体となります.このため再度充電しても,絶縁皮膜によって有効電極面積が狭まっているため内部抵抗が高まっており,セルモーターを回すだけの電流を流せなくなってしまいます.
 PbSO4の皮膜は,放電直後なら電極表面に付着したままですが,通常の使用ではセルモーターを回した後,しばらく走れば満充電されるので,また電解液に溶け込みます.しかし,長期間放置すると結晶化してしまい,普通に充電しただけでは回復しません.
 そこで十数V〜30V程度のパルス電圧を数kHz〜十数kHzの頻度で長期間加えることにより,表面の酸化膜を除去します.

<製作した回路>
 下図がその回路です.基本的には「DIYバッテリーパルサー」に記載されていた回路です.



 あれこれ試作を重ねた結果,下記の点を変更してあります.

(1)独立電源で動作
 バッテリーから給電するのではなく,外部電源で動作するようにしました.これにより長時間パルスを与え続けることができます.また,付けっぱなしだと過充電になるものの,過放電の心配はありません.
 少々の過充電は電解液を電気分解するので,電解液が少し減りますが,1週間に1度程度,液量を確認して不足していれば継ぎ足すだけです.
 過放電させるとサルフェーションを助長します.

(2)動作周波数を高めた
 オリジナルでは2kHz程度です.しかし,DIYパルサーの掲示板への書き込みを読んでいると,より高い周波数のほうが,より速く結果が得られるようです.そこで,14kHz程度にしてあります.もっと高速化してもかまいませんが,使用したファスト・リカバリ・ダイオードの逆回復時間rrが30ns程度なので,高速化には限界があります.

(3)デューティ比を高めた
 使用したトロイダル・コアはトーキンのHP-023Z(500μH@DC=0,250μH@DC=1A)です.実測した結果,3A程度までは磁気飽和しないことがわかったので,ピークで2A以上流れるようにデューティ比を4%から25%へ高めました.使用したCVCC電源の容量が最大3Aなのですが,この範囲では磁気飽和に達していませんでした.

(4)ゲート・ドライブ回路のダンピング抵抗とスピードアップ・コンデンサを外した
 このため24〜30V程度の高圧が得られるようになりましたが,波形にはかなりリンギングが生じています.ダンピング抵抗とスピードアップ・コンデンサがあると,リンギングはほとんどなくなりますが,発生する高圧も減少します.

(5)トリクル充電電流の経路を独立させた
 最初はトリクル充電のための直流電流が昇圧用コイルを流れる設計にしていましたが,次の問題がありました:

 (a)コアの磁気飽和が起きていないか心配した
  後日,実測したら直流による磁気飽和は3A程度では起きていなかったので,杞憂にすぎませんでした.

 (b)高圧パルス発生回路の電源電圧を高めると,トリクル充電電流も増えてしまう
  満充電状態でより高いパルス電圧を加えようとして,電源電圧を高めると,トリクル電流が増えるため電解液を電気分解してしまい,電解液の減少が早まっていました.しかしが,現在はトリクル電流を独立経路で流すようにしたので,バッテリーへ常時流れるトリクル電流は0.2A程度まで減り,その傾向はかなり緩和されました.

<回路の説明>
 基本的にはNE555によるパルス発生回路の出力でMOSFETをスイッチングし,MOSFETのドレインに接続されたインダクタのリアクタンスを利用して高圧を発生します.
 LM358の回路は簡易パルス・レベル・モニタであり,小型メータに表示します.

(1)NE555によるパルス発生回路
 デューティ比が0.5以下となる自走マルチバイブレータです.ダイオードD1によって,チャージ・タイムを短縮し,デューティを0.5以下にしています.
 実測周波数は約14kHzです.デューティはインダクタが直流飽和せず,かつ十分なエネルギが蓄えられる時間から約25%にしました.
 この回路のパルス出力は次式で大ざっぱに求められます:

  tH0.693R1C116×10-6[sec]→16μs
  tL0.693R2C150×10-6[sec]→50μs
     tH
  D=────0.24
    tHtL
     1
  f=────15×103[Hz]→15kHz
    (tHtL)
  ただし,tH:出力がHレベルの期間[sec],tL:出力がLレベルの期間[sec],D:デューティ比

(2)MOSFETによるスイッチング回路
 インダクタはNECトーキン製のHP-023-Zで,直流ゼロで500μH,250μH@1Aです.直流抵抗は1.0Aを流して実測したところ0.13Ωでした.また,直流ゼロでのインダクタンスは実測で470μH@14kHzぐらいでした.定格ではDC1A流すと250μHまで減るので,3Aも流せば磁気飽和する可能性があると推察されました.しかし,実測では使用状態で飽和していませんでした.
 MOSFETは低圧スイッチング用,4V駆動でDS(ON)が0.1Ω以下のものが良いと思います.インバータ・エアコン用などのライン・オペレート・スイッチング電源用だとON抵抗DS(ON)が数Ωもあるものもあります.
 2SK3140は,TO-220絶縁パッケージのもので,DS(ON)は最悪でも0.075Ω@VGS=10Vです.正常動作なら放熱器を付けなくとも少し暖かくなる程度です.しかし,なんらかの理由でONしたままになったり,コイルが磁気飽和すると過熱して破損します.

(3)整流回路
 ファスト・リカバリ・ダイオードによる回路です.汎用整流ダイオードを使うと故障する可能性があります.ダイオードD2は直流帰路を確保するためのもので,これがないと負荷(バッテリー)へパルス電流が流れません.
 D2と直列の抵抗は2Wのセメント抵抗です.動作中はかなり暖かくなります.

(4)トリクル・チャージ回路
 トリクル・チャージを併用したときにスイッチをONにします.

(5)パルス・モニタ回路
 単なる整流回路です.ピーク・ホールド付きにしようとしましたが,うまく動作しなかったことと,ユニバーサル基板上のスペースがなくなったので,そのままにしてあります(^^; これでも十分に目的を達してくれます.
 D6は出力レベルのオフセット用です.

<組み立て>
 タカチ(高地電機工業)のプラスチック・ケース内に納めました.信号発生とモニタ回路はユニバーサル基板上に組み立て,出力側の整流回路はピークで数Aが流れるので片面の生基板の銅箔をカッター・ナイフとはんだごてで剥いで作りました.
 ピークで大電流が流れる部分は太めの電線で配線し,パルスの損失を防ぎました.


内部のようす(上側が整流基板,下側は信号発生とモニタ回路)

<動作波形など>
(1)最終的な動作波形
 スイッチング周波数は14kHzです.高圧は本機の出力端子で最大+35Vぐらい発生しています.バッテリへはピークで+3A,−数百mAぐらい流れています.リンギングがあるので−方向へも電流がスイングしています.バッテリへ10cmぐらいのリード線を2本並列にして接続してあります.最短距離で接続しないとパルスはすぐに減衰してしまいます.このバッテリ接続用リード線のインダクタンスが無視できません.高圧が発生していると喜んでいても,実はこのリード線を懸命にドライブしているにすぎないかもしれないからです.
 バッテリ充電電流の基線がゆるやかにカマボコ状になっているのは電流測定センサのクランプの向きの影響です.向きをうまく調整すると水平になります(^^;

最終的な動作波形
上:バッテリ充電電流(2A/div.),中:バッテリへの出力端子での電圧(10V/div.),下:ゲート電圧(10V/div.),20μs/div.

(1)コイルL1の電流
 コイルを流れる電流をクランプ型電流測定アダプタで測定した波形です.波形が太っているのはピーク・ホールド・モードで観測したためです.電流波形の上側のヒゲは,電流飽和によるものではなく,発生した高圧パルスが混入しているためだと思います.
 電流の立ち上がりが微妙にひずんでいるのは,最終的に採用した倍電圧整流風の整流回路の影響だと思います.オリジナルの回路に近い単なる整流回路だと,電流の立ち上がり波形はスムーズな対数カーブでした.


最終的な動作波形
(サンプリング・モードのため細いパルスは見えていない)
上:コイルL1の電流(2A/div.),中:バッテリへの出力端子での電圧(10V/div.),下:ゲート電圧(10V/div.),20μs/div.


シンプルな整流回路の場合の動作波形
(サンプリング・モードのため細いパルスは見えていない)
上:コイルL1の電流(2A/div.),中:バッテリへの出力端子での電圧(10V/div.),下:ゲート電圧(10V/div.),20μs/div.

(3)ゲート・ドライブ回路の抵抗とスピードアップ・コンデンサは省略
 オリジナルの回路に入っているこれらを入れると,波形が鈍ってしまい思うような高圧が得られなかったので,リンギングなどが生じることを承知して省略してあります.
 下記はゲート直列抵抗とスピードアップ・コンデンサを挿入したときの波形です.


ゲート直列抵抗とスピードアップ・コンデンサを挿入したときの波形
上:バッテリ充電電流,中:バッテリへの出力端子での電圧(5V/div.),下:ゲート電圧(10V/div.),20μs/div.

<失敗談>
(1)トランジスタによるスイッチング回路
 最初はパワーMOSFETの手持ちがなかったので,そこらにあったTO-220パッケージの中型パワー・トランジスタで試作してみました.下記はその波形です.


トランジスタによるスイッチング回路の波形(スイッチング周波数2kHz)
上:バッテリ充電電流(0.1A/div.),下:トランジスタのベース電圧(5V/div.),200μs/div.

 教科書通りに動作するもののターンONもターンOFFも遅くて,期待するような高圧パルスが得られませんでした.上記写真のようにせいぜいピークで0.2Aぐらいしか流れません.もともとこの回路は高速ターンOFF時のキックバック・エネルギーを利用するので,大電流を流して十分コレクタ-エミッタ間飽和電圧を下げようとベース電流を流すとキャリアの蓄積が顕著で,ターンOFFが遅くなってしまいます.かといってベース電流を減らすとトランジスタが十分に飽和しません.
 スイッチング素子の動作原理に基づく制約なので,大幅な回路の見直しや追加をしないと克服できません.
 MOSFETに代えると,いとも簡単に大きなキックバック電圧が得られます.実はパワーMOSFETを使うのは,これが初めてだったのですが,MOSFETの便利さを痛感しました.

(2)ファスト・リカバリ・ダイオードの効果
 最初は手持ちの汎用整流ダイオード(DS-19,1A級,三洋)を使っていました.ドレイン側の電圧波形を観測すると,正の高圧パルスが発生した直後にゼロVまで落ちている区間が見られました.電流プローブで観測すると,このゼロV区間はダイオードに逆方向でピーク2Aぐらいの貫通電流が流れていました.順方向で1Aぐらい流していましたから,これを十数kHzで繰り返しているので,ダイオードの耐久試験をしているようなものです.
 これはpn接合における残留キャリアの影響ですね.ここまではっきり逆導通しているのを観測したのは初めてでした.
 結局,DS-19は諦めて,リカバリタイムtrrが35ns級のファスト・リカバリ・ダイオード(31DF2,3A級,新電元)に交換したら,正の高圧パルスが発生した直後にゼロVまで落ちることはなくなり,逆貫通電流はなくなりました.31DF2は千石電商で100円でした.

(4)“681”と表示があるのに68μHしかないコイルの謎
 コイル類は秋葉原の日米商事で購入しました.ジャンク屋然としたお店です.量産機器向けの余剰・死蔵電子部品が激安で店頭に並んでいます.秋葉原のパーツ店や秋月・千石・鈴商・若松をどんなにハシゴしても見つからないとき,あきらめて日米に行くと見つかります.
 NECトーキンのコイル(500μHのHP-023Z)はここで買いました.おそらく秋葉原でもっとも安価でしょう.同時に“681”と表示があって正札に“680μH”と書いてあったコイルも買いました.この681コイルは曲者でした(^^; 実測してみると68μHぐらいしかありません.おそらく“680”とマークすべきなのに,まちがって“681”とマークしてしまったために廃棄された部品だと思います.
 かつて2SC…とマークされたPNPトランジスタや,レーベル面とまったく異なる内容が入ったオーディオCDとか,ステレオ表示があるのに片chだけ音が入っていないオーディオCDを買ったこともあります.とても稀少(?)なので今も保存してありますよ(^^;
 余談ですが極上電子機器が激安価格でタマに出てくるお店です.このような極上ジャンクは秋葉通のあいだで「日米的ジャンク」といわれています.(^^)

(5)見えないパルスの謎
 スイッチング素子をトランジスタからMOSFETに交換した直後,パルスの後縁では大した高圧が観測されませんでした.失敗したかと思って回路をつついているうちに,オシロスコープの輝度を上げて気づきました.前縁で40V近いスパイクが発生していました.このとき使っていたのは帯域20MHzで30年ものの古〜いアナログ・オシロでした.
 これじゃダメだと帯域100MHzのDSOを引っ張り出してきたら,今度は輝度を上げても細いスパイクが見えません.なんとDSOのサンプリング・モードではたとえ100Mspsでサンプリングしても細いスパイクがほとんど見えないのでした.結局,アクイジション・モードをPeak Holdにしたら細いスパイクも見えるようにはなりましたが,真の波形とは似ても似つかぬ太った波形でしか観測できません.
 DSOはアナログオシロと比較にならないぐらい便利な機能がてんこ盛りですが,見えないものは見えないのだと再認識しました.DSOは「こんな波形が見えるはず」とわかっているときは(観測条件をあらかじめ最適にセットしていれば)細いパルスを見逃すことはないはずです.しかし,どんな波形が見えるかわからないときは要注意ですね.しかも,たとえ観測できたとしても真の波形が表示されているわけではないことを肝に命じて使わないといけません.
 オシロスコープの世界的トップ・メーカーであるTektronix社の製品ラインナップからアナログオシロが消えて数年が経ちますが,アナログオシロの需要がなくなることはないように思います.アナログにしか見えない波形もあるんですね.


サンプル・モードではパルスが見えない…


ピーク・ホールド・モードだとパルスは見えるが太ってしまって真の波形は見えない

(6)前縁パルスの謎
 MOSFETでスイッチングしたときのドレイン側出力パルス電圧をオシロで観測すると,前縁と後縁にプラスの高圧が観測されます.動作原理から考えると,前縁では正パルスは発生しないはずで,発生するなら負パルスのはずです.
 最初は発生理由がわからず,トリクル・チャージ電流がパルスの有無に関わらず流れていることが原因かとも考えましたが,そうだとしても前縁の正パルスが発生するはずはないのです.
 結局,DSOで前縁を拡大してみると,発生しているのは負パルスだけれども,大きなリンギングが生じているために正パルスとして見えていたことがわかりました.


後縁だけでなく前縁でも正のパルスが発生している?
上:バッテリ端子電圧(5V/div.),下:ゲート電圧(10V/div.),10μs/div.


前縁を拡大してみると発生しているのは負パルス
上:バッテリ端子電圧(5V/div.),下:ゲート電圧(10V/div.),100ns/div.

(7)コモンモード・ノイズの影響
 インダクタの磁気飽和を警戒して,ホールICを使ったクランプ型DC電流測定アダプタを使って,ドレイン側でスイッチング電流波形を観測しました.この電流測定アダプタの電源をOFFにしていても,なんとオシロスコープにはそれらしいインパルスが観測できてしまいます.たぶんコモン・モード・ノイズだと思って,ダメもとでTDKのクランプ型ノイズ・フィルタ2個を直列にし,オシロのプローブを4回巻き付けたところ,ウソのようにノイズが激減しました.
 クランプ型のノイズ・フィルタの効果は,マユツバものだと疑っていたんですが,予想外に効くことがわかって感心しました.


電流プローブへの同軸コードをクランプ型ノイズ・フィルタに
巻き付けるとコモン・モード・ノイズが激減した

<結論>
 最初に書いたように,現時点でその性能回復効果を定量的に確認するには至っていません.
 6年目を迎えたバッテリーは,普通に満充電まで充電してもひと月ほどでセルが回らなくなっていました.しかし,本機を使って「満充電+1週間のパルス充電」した後は2ヶ月たった今も順調にセルが回ります…とはいえ新品同様とはいえません.6年めを迎えたバッテリーですが,まぁ3年ぐらい使ったバッテリー程度には復活している感じです.バイクの利用頻度は週1回せいぜい1〜2時間乗る程度です.
 現状の状態にするのに,セルが回らなくなったバッテリを下ろして,CVCC電源を使って2Aぐらい流しながら満充電にした後,1週間ほど連続してパルス充電しました.パルス充電中にバッテリーには0.2Aぐらいのトリクル充電電流が流れていました.
 満充電するのに半日,その後1週間パルスをかけ続けた結果,上述のような回復が得られました.  今後,さらに充放電を繰り返すと,ある時点から急速に回復することがあるようなので,それにも期待しています.

<余談>
(1)私のバイクの電気系の収支
 私のバイクはヘッドライトOFFの状態では1500rpmあたりから,ヘッドライトONでも1700rpmあたりから充電が始まります.アイドリングは1000rpmあたりなので,少しエンジンを回せば充電状態になりますが,信号待ちでは放電状態ということです.
 また,レギュレータが14.5Vぐらいで動作して過充電を防ぐので,走行を続けてもすぐには満充電にはなりません.

(2)バッテリーの寿命が尽きてくると,電解液の減りが早まる
 バッテリーの寿命が近づくと,電解液を補充してもすぐに電解液が減る症状を体験します.おそらくサルフェーションによって実質的な電気容量が減少しており,すぐに満充電になってしまい,その後は走行中の充電によって水が電気分解されてしまうためだと考えています.

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